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何かを決定するための会議、徹底的に討論するための会議、参加者に情報を伝達するための会議である。
会議を招集するときは、事前にミッションを明らかにするべきである。
ミッションが明らかになれば、その会議における基本的なルールが決まる。
たとえば決定のための会議であれば、最終的な意思決定を下すまでは閉会しない。
現実の会議では、決定のための会議でも何とか全員のコンセンサスを得ようとして討議のための会議にすり替えられ、延々と議論ばかりが繰り返されて結局は継続審議になってしまうことが多い。
意思決定という会議体のミッションが守られていないからである。
案件ごとに意思決定に至るまでの情報伝達会議と討議のための会議を準備し、意思決定会議までのスケジュールをシステマティックに設定しておき、そのスケジュールは厳しく遵守する姿勢が不可欠なのである。
こうした会議ミッションの明確化を実現するためには、社内の会議体運営をすべてコントロールする事務局を設置して権限を与えるという方策が考えられる。
会議にかける案件の選定、会議のスケジュール、参加者や発言者の選定など、会議の運営や進行に関わる業務を統括して事務局が仕切るわけだ。
これもスタッフ機能として、かなり高い能力が要求される仕事である。
決して官僚タイプの事務屋さんにこなせる業務ではない。
その事務局に最精鋭の人材を何人か張りつけても十分に価値があるほど、会議による迅速な意思決定は企業の生産性全体を大きく左右するのである。
意思決定型組織を構築するためには、いままで挙げてきた組織や制度上の工夫とは別に、もう一つ欠かせない要素がある。
企業の中で最大の意思決定者たるべきトップマネジメントの変革である。
トップマネジメントのあり方を企業の競争力を左右する意思決定機関の一部として革新することなしに、コーポレート・リストラクチュアリングが完成することはあり得ない。
組織や制度がコーポレート・リストラクチュアリングの必要条件だとすれば、トップマネジメントの革新は十分条件ということもできる。
それだけトップマネジメントが企業活動の中で担う役割がこれまで以上に大きくなるということである。
従来の日本企業と欧米企業は、さまざまな面で対照的だった。
トップマネジメントのあり方も決して例外ではない。
日本型の社長と欧米型のCEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)は、同じトップマネジメントとはいえ、まったく異なる性質を持っている。
そもそもトップマネジメントが組織内で担うべき機能には二つある。
企業をどの方向に引っ張り、何をやらせるかを決める意思決定機能。
企業の戦略的な側面に関わる機能だといえる。
これに対して組織的な側面に関わる機能は、組織成員のモチベーションを高めて引っ張っていくリーダーシップ機能である。
このうち、日本型の社長が意思決定機能をあまり問われてこなかったのはこれまで指摘してきたとおりである。
集団モラルの調和の中から自然に浮かび上がる集団意思の総和として意思決定がなされており、しかも戦略的な方向性は欧米追従路線によってすでに確定していたため、そもそも大胆な意思決定を下す必要度が低かったのである。
そこで従来の日本型トップマネジメントは専らリーダーシップ機能のほうを担ってきた。
ただし、獲物を捕らえるために正確な状況分析に基づいた戦略を立て、部下に的確な指示を与えながら先頭に立って引っ張っていく狩猟民族型のリーダーシップではない。
田植えや刈り取りといった定常的な集団作業を効率的に行うために必要な家族主義的調和を保つことを使命とした農耕民族型の長老・村長的なリーダーシップである。
集団モラルの維持を前提としているから、社長に求められる条件は、人望、人格、バランス感覚といったものになる。
より広い範囲の支持を得るためには社内における保守本流部門の出身者であることが望ましい。
いずれも社内コンセンサスの形成と家族の調和の維持のために合理的な条件である。
そのため、大半の社長がいわゆる順当人事によって選ばれている。
天下りを除くと、副社長から社長に昇格するケースが五○%、副社長を置かない企業での専務からの昇格を含めると、八○が課長、課長が部長に昇格していくのと同じように、保守本流部門から社長への階段を一歩ずつ登っていくわけだ。
そういう社長たちが実際に担っていた役割といえば、結局は管理職として役員を束ねる仕事である。
重大な意思決定をするわけでもなく、強力に会社をリードしていくわけでもなく、ただ役員たちの上司として彼らのコンセンサスをまとめ上げていたのである。
一方、欧米型のCEOの場合は、その役割の中でも戦略的な意思決定が持つウエイトが非常に高い。
積極的なイノベーションを実現するためには、必然的にCEOの意思決定が要請されるのである。
独創性とオリジナリティこそを重要視する組織成員構成になっているわけであるから、集団合議的なコンセンサスを得ることはそもそも困難であり、日本の社長のような調整型のリーダーシップは必要ない。
むしろ自分の意思決定に同調しない者まで含めて力強く引っ張っていく剛腕型のリーダーシップが求められるのである。
日本型の社長が役員陣の管理職だとすれば、欧米型のCEOは会社の大統領的な存在だといえる。
全権を掌握して自由に意思決定を下し、それを実行できるわけだ。
もちろん、それだけ強力な権限を握っていれば、一方でその動向を監視する目付役が必要になる。
それが株主である。
大統領が国民の直接投票で選ばれるように、CEOは常に株主の評価にさらされる。
役員会は大統領に対する議会の役割だと考えればいいだろう。
欧米型のCEOは自由に意思決定を下せる分、当然ながら失敗したときには厳しく責任を問われる。
ところが日本型の社長はまったく逆。
集団のコンセンサスによって意思決定がなされたという前提があるため責任の所在が暖昧になる。
実際、バブル崩壊以降これだけ各企業の業績が悪化しているにもかかわらず、その責任を問われて辞任した社長はほとんどいない。
これがアメリカなら、ほとんどのトップマネジメントのクビが飛んでいることだろう。
それだけトップマネジメントが組織の中で担わされている役割が日本と欧米では違うのである。
日本でもイノベーションを追求する経営戦略と、それを実現するための意思決定機能が企業の競争力を形成する時代になった以上、いつまでも従来の農耕民族型あるいは調整型のトップマネジメントを抱えていては現状を乗り切ることはできない。
すでに日本のビジネスマンたちもそのことを敏感に悟っているのだろう、「尊敬する経営者」をランク付けする雑誌のアンケート結果を見ると、ダイエーの中内明会長、京セラの稲盛和夫会長、花王の丸田芳郎会長といった狩猟民族型の強烈な個性を持った経営者たちが上位に顔を出している。
彼らが多くの得票を集めることは、大胆な意思決定のできない調整型のトップマネジメントでは混迷を極める現状に対応できないというビジネスマンたちの苛立ちを表しているように見える。
では、CEO型トップマネジメントを育成するにはどうすればいいのか。
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